株式投資

株とは何か、株価の基本

株式投資をしていると日々の株価の上がり下がりに一喜一憂しがちです。
しかし、そもそも株とは何でしょうか?
今回はその基本について考えてみます。

そもそも株が何かを知らなければ現在の株価が高いのか高くないのか判断の基準を持てませんし、本質的に重要なことですよね。

株とは何か

株とは、一言で言うならば、会社の区分所有権です。

例えば、1 億円の価値のある会社があったとして、その会社の発行済み株数 1,000,000 株のうち、0.1% にあたる 1000 株を自分が保有していたとします。
すると、保有している株式の価値は

1 億円 x 0.001 = 10万円

となります。
また、一株あたりの価値は

1 億円 / 1,000,000 株 = 100 円/株

です。

株が会社の区分所有権であるならば、

会社の価値 > 時価総額
(あるいは株価とは一株当たりの価格なので、一株あたりの価値 > 株価)

のときに買えればお得、ということになります。

会社の価値とは何か

では、「会社の価値」とは何でしょうか?どうやって決めることができるでしょうか?
(ここではドライに単に経済的な側面でのみ考えます)

わかりやすい単純な例として、例えば資産として現金 1 億円のみを持っている、明日解散する予定の会社 A があったとします。事業ももう閉じて行っていません。
一日待って明日会社が解散すれば 1 億円が株主に分配されることになる(実際そんなに単純ではないと思いますが・・)ので、会社の価値は 1 億円と見て良いでしょう。
先の例と同様に、発行済み株式数が 1,000,000 株であれば、一株当たりの価値は

1 億円 / 1,000,000 株 = 100 円/株

となるでしょう。単純ですね。
この会社の株価が 例えば 50 円で売っていたら買いたいです。
100 円玉が 50 円で売っているようなものです。

さて、ここから少し難しくなってきますが、毎年 100 万円をコンスタントに稼ぐ会社 B があったとします。
資産は特に持っていませんが、国との特殊な契約があり、未来永劫毎年ほぼ確実にピッタリ 100万円が利益となるとしましょう。
そしてさらに特に事業にお金はかからないので、利益の 100 万円はそのまま株主への配当に全額回されるとします。
利益を足してみると

100万 + 100万 + 100万 + 100万 + ・・・

となり、足し続けると無限大になります。ということは会社の価値は無限大でしょうか。
本当?

直感的に考えても、いくら払ってもこの会社の株を買いたい、とはならないですよね。上限はあるはずです。
では、いくらを会社の価値と見るのが妥当でしょうか。

色々な見方ができそうですが、この場合一つの考え方としては、国債のような、損する可能性ががかなり小さいと考えられる投資対象の利回りと比較してみることができるでしょう。
国債の年利が例えば 1% だとすると、1億円分の国債を買えば、

1億円 x 0.01 = 100 万円

が毎年入ってきます。

と考えると、ほぼ確実に毎年 100 万円の利益を上げる会社 B の価値も 1 億円ほど、と見ることができるでしょう。
 

実際はもっともっと難しい・・

上ではかなり単純化して考えてみましたが、実際はもちろんもっと複雑です。

例えば、資産 1 億円を持ち、今年の利益予想が 100 万円の会社 C があったとします。
この会社の価値は、資産が 1 億円あるからその分の価値が 1 億円、利益が 100 万円だからその分の価値が 1 億円、合わせて2 億円・・・となるでしょうか?

現実の市場ではそう簡単に会社の価値や株価は決まりません。
なぜなのか、資産・利益の両面から考えてみます。

PBR

まず、会社Aの場合と同様に、資産を元にして考えてみます。
資産を元に株価の高低を測る際の便利な指標として指標として PBR があります。よく聞きますね。

PBR = 時価総額 / 純資産

です。
時価総額 = 株価 x 株数ですから、

PBR = 株価 / 一株あたり純資産

としても同じことです。
上の会社 A の議論を元にすると、PBR が 1 を下回ると、資産=会社の価値に比べて時価総額が低いということになるので、お買い得、ということになります。
わかりやすい指標ですね!

ですが、株式投資の経験がある程度ある方ならよくご存知なように、PBR が 1 を下回る銘柄はザラにあります。
なぜでしょうか?これは以下のような理由が考えられます。

  • すぐに会社の資産を換金できるわけではないから
    上に書いた会社 A の例では明日解散すると考えていましたが、実際の会社はそうではなく基本的にこれから先も続いていくでしょう。
    つまり会社が資産を持っていても、我々株を持っている株主にはあまり分配されない状態が続くかもしれません。
    もしかすると、無能な経営陣がこの先会社の資産を使い尽くし、10年後20年後には会社の資産は 0 になっているかもしれません。
    そう考えると、会社の資産をそのまま株価の価値に置き換えて良いか、というのは考えものですよね。

  • 本当にその価格で換金可能とは考えていないから
    「会社の資産」とここで呼んでいるのは、中身を見ると、大量の商品の在庫と、工場だったとしましょう。
    会社がもしそれらすべてを売ったとして、本当にその価格(簿価)で売れるでしょうか?
    同じ価格でも、現金でその資産を持っている場合と同じにはちょっと見られないですよね。資産の換金性も考慮する必要がありそうです。
    (逆に、取得価格と現在価格が乖離していて簿価よりも実際の価値が高いと考えられるケースもあり、その場合はその分上乗せして考える必要があるでしょう)

PER

一方、会社Bのように利益を元にしても考えてみます。
この場合の便利な指標としては PER があります。これもよく聞きますね。

PER = 時価総額 / 税引後純利益

です。これも一株辺りに直して、

PER = 株価 / 一株あたり税引後純利益

としても同じことです。

さて、PER に関してはその逆数 1/PER がいくら投資したときにいくらリターンがあるかという割合、「利率」に対応することがわかります。
PER が例えば 20 だと、今の株価で投資すると時価総額の 1/20、つまり 5% が税引後純利益となります。
上の会社 B の話からすると PER の値は利益からバシッと決まりそうですが、実際の銘柄では PER=5 の会社もあれば、PER=100 の会社もあり、実に様々です。
これはなぜでしょうか?以下のような理由が考えられます。

  • 利益がすべて株主への配当に回るわけではないから
    100 万円の税引後利益があったとして、普通は 100 万円すべてが株主への配当に回るわけではありません。
    将来の投資や危機に備えた内部留保とする分もあります。特に成長企業では全く配当を出さないような企業も多いです。
    配当に回らなくても会社の資産に回るので結局株主のもの、ともまあ言えるのですが、上で書いた資産と PBR の話も考慮するとそのまま額面どおり受け取って良いかは微妙なところですね。    

  • 将来の成長、あるいは衰退が予期されており、その分が織り込まれているから
    会社Bの例では、将来の利益がほぼ確実に一定であると仮定しましたが、実際には成長企業でしたら10年後の利益は5倍かもしれませんし、衰退企業でしたら10年後の利益は半分かもしれません。
    将来見込まれる利益が少なければPERは低くなるでしょう。

  • 将来の不確実性(リスク)のぶん割り引いて考えられているから
    国債の利率が1%だったとして、利益がほぼ横ばいであると大雑把に考えられる企業のPERが100になるように株価が決まるかというとそうはなりません。
    不確実なもののほうが利率が高くなる(リスクプレミアム)、ということがあります。
    直感的に考えても、一企業の株式のリスクは国債のリスクよりもずっと大きそうなので、同じ利回りなら国債の方を選びそうですよね。よって、その分だけ株式はお得に買えないと割に合わない、ということになります。
    リスクとリターン回りの話については、色々興味深いのでまた別途記事にしたいところです。

まとめ

今回の議論では考えやすいように税金など諸々の細かい話はあまり気にしてませんし、実際の株式投資はもっともっと、それこそ会社の価値など見積もるのは無理なんじゃないかと思うほど複雑です(笑)。
万人が納得する会社の価値、というものがそもそも存在しないでしょう。
そして、たとえ自分が会社の価値を正確に見積れたとして、それより割安だからと株を購入したとしても、市場ではそこまでの評価はされず、(自分が正しかったにも関わらず)株価は下がって損失を出してしまうかもしれません。

ただ、会社の価値が曖昧があるものだとしても、そして市場でそのとおりの評価がされるかはわからなかったとしても、会社の価値について考えることは重要だと考えます。
それがわからないと、株価が上がりそう下がりそうという感覚だけで投機することになってしまうでしょう。
私の投資する銘柄も、基本的には「会社の価値」と「株価」の乖離があると見込んだ銘柄を選んでいるつもりです。

結構長くなりましたね。今回はとりあえずこのあたりで・・。

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